Q.同一労働同一賃金で介護の現場はどうなる? A.二極化が進みます

2020-07-09

同一労働同一賃金で介護の現場はどうなる?正社員は損?アイキャッチ

こんにちは、介護福祉士のカニ(@kaigo_kani)です。

この記事では……

・同一労働同一賃金になると結局どうなるの?

・そもそも同一労働同一賃金ってなに?

・で、パートと派遣の給料は上がるの?

あなたのこんな疑問や悩みを解決します!

記事の内容

◆で、結局どうなるの?

◆同一労働同一賃金とは

◆【パート・派遣】あらわれる具体的な変化【仕事内容・賃金】

20年近く介護の現場で働いてきた経験から、同一労働同一賃金で介護の現場がどうなるのかを予測をまじえて解説していきたいと思います。

この記事を読めば、同一労働同一賃金で介護の現場にどのような変化が起きてくるかがわかります。

介護福祉士カニ

今ポイントを押さえておけば、後からあわてずに済みますよ!

で、結局どうなるの?

で、結局どうなるの?

まずは結論から。

働く側にとって悪い職場と良い職場の二極化が進む。

二極化というのは、同一労働同一賃金が適用されることにより、ブラック的な悪い職場はさらに状況が悪くなり、働きやすい良い職場はさらに良くなっていく、ということです。

まだ制度が始まってないのであくまで予想ですが、大きく外れることはないと思っています。

なぜ二極化が進むかというと、同一労働同一賃金によって会社のマネジメント能力の差が表に出てきやすくなるからです。

前提として、介護の現場は元々がほとんどが同一労働だということがあります。
正社員もパートも派遣も、仕事の内容にほとんど差が無いのです。

にも関わらず、正社員とそれ以外で、ボーナスや手当などの待遇面に合理的じゃない差をつけていた会社ほど、同一労働同一賃金の対応に苦労することになるのです。

差が広がり方を比べてみましょう

よりブラック化する会社

・パートにボーナスや手当を支給したり、場合によっては時給を上げる必要があったりで人件費がかかる。

・その費用を作るために、ボーナスや手当の支給額を減らす
→職員の不満をまねく


・同一労働同一賃金の根拠を示すための、職務内容を明らかにするための取り組みが不十分だと、業務体制の急な変更が必要になる。
(慣れた仕事のやり方を、上の都合で変えさせられたりする)
→職員の不満をまねく×2

・不満が高まれば職場の雰囲気は悪くなり、離職率も高くなる。
→職員の不満をまねく×3

・人手不足で人員補充もままならず、負担が増えてさらにギスギスする、悪い口コミが広がる。
→負のスパイラル!

より働きやすくなる会社

・同一労働同一賃金を見据えて、正社員とパートに待遇の差を少なくしておく。
(手当の調整や、固定費削減の施策など)

・人件費の調整は最小限。
→正社員に不満なく、給料増えるパートさんは喜ぶ

・同一労働同一賃金の根拠を示すための、職務内容を明らかにするための取り組みも、あらかじめ少しずつ進めていけば急な業務の変更などは必要なくなる。
→不満なし

・給与体系や、業務体制が整っていてわかりやすいものであれば、安心して働ける。
→良い職場には良い人材が集まる

・そういう職場は離職率も低く、良い口コミが広がり、良い人材が集まりやすくなる。
→どんどん良くなる法華の太鼓

実際はこんなに単純なものではありませんが、まあ大体はこんな感じで、ブラック的な悪い職場はさらに状況が悪くなり、働きやすい良い職場はさらに良くなっていく状況が生まれると私は予想しています。

同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金とは

そろそろ「ていうか同一労働同一賃金って一体なんですか?」という声が聞こえてきそうなので、かいつまんで解説します。

同一労働同一賃金は、いわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものである

厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」より

同一労働同一賃金は、政府が掲げる「働き方改革」の目玉で、その目的は「将来的に非正規という枠組み自体をなくし、ライフステージにあわせた働き方を選べるようにする」というもの。

えーとこれは、平たく言えば、国は、外に出て働く人を増やしたい、と考えているということ。

この先、働ける年齢(18歳~65歳)の人口がどんどん減っていくよ、と。
そうなると、日本国内の金回りが悪くなって経済がますます停滞・下降するわ、税収も減るわで、このままじゃ先行きがヤバイよね、と。
だから、パートとか派遣とかで、少しの時間でもいいから外に出て働く人を増やすために、パートや派遣の待遇を良くするよ、というわけです。
それでどんどん稼いでもらって、ちゃんとお金を使ってもらって税収も確保していきたいよ、と。
そういう政策なわけです。

介護福祉士カニ

ちなみに「同一労働同一賃金」という法律があるわけではなく、主に「パートタイム労働法」「労働者派遣法」の2つの法律が改正されることで、同一労働同一賃金を実現しようとしています。

「同一労働同一賃金」が適用されるのは、大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月から。

介護に関しては、100名以上の従業員がいれば大企業に分類されるのでほとんどの社会福祉法人または民間企業は2020年4月からの適用となります。
つまり「同一労働同一賃金」が適用されるのは遠い未来の話ではなく、もうすぐそこまで来ている話なんです。

だからといって、変に不安になったり、給料が上がるかも、と変に期待したりはしない方がいいです。
すぐに目に見える変化が出てくるということはないですから。
私たち必要なのは、少しずつ変わっていくところを冷静な態度で見極める、ということ。

ここから先は、その少しずつ変わる具体的な部分についての予想をまじえた解説になります。

【パート・派遣】あらわれる具体的な変化【仕事内容・賃金】

【パート・派遣】あらわれる具体的な変化【仕事内容・賃金】

では、同一労働同一賃金が始まったら具体的にどう変わるのか?

同一労働同一賃金で私たちに実際どういう影響があるかは、法改正に対して企業側がどんな対応をするかによって変わってきます。

ただ、全体的に見て、この同一労働同一賃金にしていこうという動きは正規(主に正社員)と非正規(主にパート・派遣)という枠組みそのものを取っ払う、というところを目標にしています。

ですので、相対的に非正規、つまりパートや派遣の待遇が今までより良くなる方向に変化していくことは間違いありません。
私がこの「介護転職できるかな」で、正社員という働き方よりもパートや派遣という働き方をおすすめしている理由もここにあります。

それではここからは、

◆仕事内容の変化

◆パートと派遣の賃金は上がるのか?

それぞれについて解説していきます。

仕事内容の変化

同一労働同一賃金によって会社・法人は、職員それぞれがどんな仕事をして、どんな責任を負っているかについてハッキリさせる必要が出てきます。
待遇の違いの根拠とするために必要だからです。

そのため「仕事内容の見える化」を進める会社・法人が増えるでしょう。

具体的には、

  • 排泄…おむつ交換 トイレ誘導
  • 健康…バイタル測定 与薬 状態観察
  • 生活環境…リネン交換 居室の清掃 私物管理

など項目ごとに仕事内容を整理して、業務分担表や職種記述書など目に見える形で誰もが確認できる書類などに明記します。
これにより、誰が何をするのかが明確になります。

こうして、「仕事内容の見える化」が進めば、「あの人はこれやってない、私はここまでやってるのに!」的な不公平感が少なくなります。

ただ、この「仕事内容の見える化」を実際の業務と関わりのない人だけで進めた場合、実際の業務に見合わない分類や業務の記録などによって、かえって仕事が増えるなんてことにもなりかねません。

介護の現場では、古い体質の組織ほどこういう現場と管理体制のすれ違いが起こりがちです。

同一労働同一賃金によって、こういったいざこざが起こるような組織とは、早めに見切りをつけることをおすすめします。

パートと派遣の賃金は上がるのか?

賃金は、増えるケースもあるし、変わらないケースもあります。
会社・法人によるので、一概には言えません。

パートと派遣に分けて解説していきます。

パートに関して

もともとパートと正社員の待遇の差が大きい会社・法人では、パートがもらえる賃金は増える可能性が高くなります。
具体的には、ボーナスや各種手当。
これらをまったく、あるいはほとんど支給していなかったところは、同一労働同一賃金によって支給せざるを得なくなるために、もらえるお金が増えるケースが多いでしょう。

逆に、もともとパートの賃金が比較的高かったり、正社員と比べてパートの仕事量が明らかに少ない会社・法人では、待遇が変わらない可能性が高くなります。
すでに同一労働同一賃金の基準を満たしていて、待遇を改善する必要がないからです。

派遣に関して

派遣に関しては少し事情が複雑です。
同一労働同一賃金が導入されることで、派遣会社は賃金の決め方を2種類のうちどちらかの方式を選ぶことになるからです。

どちらがいいか、悪いかはケースバイケースなので一概には言えませんし、正直気にする必要もないです。
働く側がどうこうできる問題ではないからです。
ただ確実だと思われるのは、介護の派遣の待遇は良くはなっても悪くはならない、ということ。
介護業界の人材不足が急に解決することはない上に、派遣会社にとって人材の確保は最重要事項だからです。

ですので、一応解説はしますが興味があれば頭にちょっと入れておく、くらいの感覚で全然OKです。

派遣先均等・均衡方式

派遣社員の賃金を、派遣先の正社員と同等の賃金にする方式

 派遣先によって賃金が変わる

労使協定方式

派遣社員と派遣会社が労使協定を結んで、同じ地域で働いている同じ職種の正社員の平均以上の賃金にする方式

 派遣先に関わらず賃金は一定だが、派遣先の社員とは差が出てくるケースがある

派遣については色々と複雑なところが多いので、詳しく説明しているこちらのサイトも参考にしてみてください。

まとめ

まとめ

結論としては、最初にも書いた通り、介護の職場は二極化が進むでしょう。

つまり、良い職場、労働環境が良くて賃金もしっかり出してくれる会社と、悪い職場、労働環境が悪くて、賃金も同じ地域と比べて安い会社の差がハッキリしていく、ということ。

介護業界全体的で見れば、悪い職場は人が集まらず立ち行かなくなり改善を迫られるので、平均点的なものは上がっていくイメージです。

差がついてわかりやすくなるとはいえ、良い職場を見極めるには、比較対象を増やすための情報と、良い悪いを見極めるための経験が必要です。

これからも介護の転職を考えているあなたが、良い仕事・職場を見つけられるための記事を書いていきますのでよろしくお願いします。